2015年04月01日

グリン豆日和

庭付きの戸建に越してきたので家庭菜園なるものをやってみたのはいいけど、野菜作りというのは難しいものだね。

土を耕すだけで一日体力を使い果たした。
翌日は種蒔きを予定していたのだが、夜明けから湿った風が強く吹いていて庭に出た途端、僕が手にしていた種はすべて風にさらわれてしまった。

為す術もないというのはまさにそんな状態を指す。
仕方なく種蒔きは諦めて、僕は家の中に戻ってその日は夜までずっと仕事をした。
その後二日間、弱い雨が四六時中降り続いた。
そしてやっと晴れて二日振りに庭に出てみるとだ。

驚いたことに、耕した土のあちこちから芽が出ていた。
知らないうちに僕の庭にトトロが悪戯をしていったのかと思ったが、なんてことはない、僕の手から風にさらわれてしまった種が庭中にこぼれて、そこから芽吹いたというわけだ。
おかげで庭中、グリーンピースだらけとなった。

そいつはそれからすくすくと成長した。
そして、やれやれ、と、僕はため息をつきながら大量のグリーンピースを収獲する羽目になる日が訪れた。

Rakkaにも送ってあげたくなるほど、見事な豆っぷりだ。
だけど残念ながら、僕はRakkaの住所を知らない。
そういえば彼女はまた引っ越しをした。
新しい場所には知りあいが全然いないそうで、今は自分の家を整えるのに精を出してる頃だろう。

仕方なく僕は自分で穫ったグリーンピースを自分の為に料理した。
豆ご飯。
昆布出汁で炊く白米にグリーンピースを混ぜる春の飯。
いいね、これは僕の好物だ。
豆を軽い塩味のペーストにしてスライスしたバゲットに塗ってオリーブオイルを垂らしてトースターで焼く。
とろけるチーズなんて乗せても美味い。
さっと湯掻いた豆をおひたしにする。鰹節をかけて。
これはさっぱりして美味い。

どうだい。僕のところにグリン豆を食べにおいで。
千葉君でもいいよ。
とにかく沢山あるんだ。

そして困ったことに、豆を収獲した後の畑には今、大量の蒲公英が咲き乱れてる。
蒲公英はどんな食い物になるのか知りたいね。
僕は今書いている小説の展開よりも、春風にそよぐ黄色の花を窓から眺めてやれやれとそいつを考えこんでいる。

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posted by Sei at 17:41| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月28日

担当と読者と僕

起きたら担当編集者の千葉君からメールが入っていた。

「読者からメールが来ているのでバイトの大原に転送させます。ブログで返答してあげて下さい。(※ギャラは発生しません)」

ここまでが、前回の粗筋のおさらい。

あれから僕は転送されてきた972通のメールの受信を終えた。

971通はスパムメールだった。
こんなものまでご丁寧に転送してくるバイトの大原君はなかなかのやり手だね。

そういうわけで、僕に来た読者からのメールというのはたったの一通だったが、まあ最初はこんなものだろう。
文芸ファンの皆さんも、今はM上H樹氏の期間限定の質問受け付けに気をとられて(なんせ期間限定だからね)、他の作家は常時読者からのメールを受け付けつけていることを忘れてしまっているのかもしれない。

だからたった一通でも、この僕にメールをくれた読者の存在は嬉しいものだ。
僕は売れっ子になった途端にファンをないがしろにするタイプの作家にはならないからね。
初めて僕にメールをくれたこの読者のことは、一生忘れたりしない。

そんな熱い気持ちで僕も、読者メールに応える準備をしていた。

でははじめようか。






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Fw:ショックです

> Rakkaって誰ですか?
> 「彼女をがっかり」
> 彼女?彼女?彼女?
> その人、女の人なんですか?
> どんな関係の女性なんですか?
> まさか……。
> ただの友達でしょう?ううん、TURUYAの本屋で見かけただけの人、ですよね?
> 時々落花生みたいな顔した女の人見かけます。最近流行ってる顔立ちですよね。
> Rakkaって、そんな落花生顔の女でしょ。
> なーんだ、そうならそうと早く言って。馬鹿。

−−−−−−−−−
千葉県太
e-mail:chi-ba-wa-notTokyo@kantan.shuppan.inzei.nai
URL:anatano.nakani.irunet
−−−−−−−−−


REPLY:

Rakkaのことに突っ込まれてしまったか。
参ったな。(照)




……しかし、あれだね。
何故、そのまま転送されてきたメールの署名が僕のよく知っている人物のものなのか、そこが不思議だね。
スパムまでご丁寧に転送してきた大原君は、この署名に気づきもしないで送ってきたんだろう。

M上H樹氏は昔、エッセイでサイン会をやらない理由を書いていた。
サイン会をやってもサインを求める客が来ないことを怖れていたらしい。

成程ね。
僕が出版した時にサイン会の企画すらなかったのは、出版社がサインを求める客が来ないことを怖れたんじゃないのかと思い当たった。

そうさ。
成程、僕は確かにこの前、千葉君に読者メールは残らず転送してくれ、と頼んだ。
だがそれはあくまでも読者からメールが来た場合を想定して、の話であって、どこぞのM上H樹氏のように企画としてメールを募集したわけではない。
来なければ来なくても僕はね、一向に構わなかったのだよ。
僕が書くものを好んで読んでくれるような読者は、繊細でシャイなタイプが多いんじゃないかと思っている。
好きな作家がいても一読者の立場でメールをするなんておこがましい、と腰がひけてしまう奥ゆかしい性格の人ばかりだろうからね。

だから僕にせっせとメールをくれるのは、今のところRakkaだけだ。
彼女はちょっと変わった女性だからね。
けなしてるんじゃない。
これは彼女の魅力について語ってるんだけどね。

しかしまぁ、これはどうしたものかと僕は千葉君の署名を見つめながら考えた。
いや、彼も読者として僕にメールをくれたのかもしれない。
そうか、彼にはRakkaの話なんてしたことがなかったから気になったのだな。
でも妙に気にしているのが気になる。
「馬鹿」って、何が馬鹿なんだ、千葉君。

これを機に僕もこれからは読者のメールに応える企画をこのブログでやっていくかな。
良かったら読者の諸君はどしどしメールを下さい。

この「どしどし」って前から気になっていたのだが「どしどし」って一体何だろうね。
いざ自分が使ってみると、確かに「どんどんメールを下さい」ではしっくり来ない。
メールはどしどし貰うものだ。

ここでひとつ、どしどしを調べてみた。
http://collocation.hyogen.info/word/%E3%81%A9%E3%81%97%E3%81%A9%E3%81%97

ふむ。
……どしどしのゲシュタルト崩壊にご注意。

kotaeted by Sei


posted by Sei at 01:53| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月24日

君を待つひととき

起きたら担当編集者の千葉君からメールが入っていた。

「読者からメールが来ているのでバイトの大原に転送させます。ブログで返答してあげて下さい。(※ギャラは発生しません)」

まあ、そうだね。
そろそろこんなものが来るんじゃないかと思っていた頃だ。
文壇バーに行った時も千葉君にはファンレターの話はついでだからしておいた。

小説家というのは契約書のない世界で仕事をする。
だからなんだって口頭で確認しておく必要がある。
僕が気にしていたのはさ。
ファンレターっていうのは、つまり読者からのラブレターのようなものだろ。

中には僕のことが好きなあまり、手紙の中に何か入れてくるかもしれない。
女の子がケータイの番号とか、あとはお金持ちのマダムが小切手とか。
アイドルはバレンタインにトラック一杯のチョコを貰うと聴いたが、僕もプロの小説家になったからにはそのぐらいのものを受け取る覚悟は出来ている。

だけど問題は、それらが直接僕のところに届けられるわけではないってことだ。
ほらさ、編集部に届いたものなんて、僕にはいちいちわからないからさ。
勝手に編集部内で処理されても困るし、写真入りの可愛い女の子のファンレターに勝手に返事されたりするのも冗談じゃない、その子は僕に気があるんだぜ、勝手に横取りすんなよ、そういうことされると本当に僕は腹が立つね、だって考えてもみろよ、小説家っていうのは孤独な稼業で取材でも行かない限りは自宅で独りきりだ、誰とも会わない、特に可愛い女の子とは日頃全然会うチャンスがないんだ、それをだ、僕のファンだっていう女の子の存在を僕に知らせてくれないなんてあんまりじゃないか、担当の編集者はまだ独身だからわかるんだよ、女の子に飢えてるんだろ、いや飢えてるっていうのはちょっと言い過ぎたかな、だけどこの前合コンに行ったら落花生のような顔の野郎しか来てなくて女子(皆さんCAだそうだ)には全員ドタキャンされたって愚痴を聞かされたばかりだからな(残念だったな千葉君)、野郎同士で唐揚げに檸檬をかけるかかけないかで揉めだして、そのうち「檸檬」が書けるかっていう話になって檸檬と林檎と薔薇は難なくクリアしたらしいが(さすが文芸部の編集者だね)なんだっけな「凹」と「凸」のどっちが「おう」でどっちが「とつ」かっていうので引っ掛かったんだったか酷く機嫌が悪かったんだよ、そう僕たちが文壇バーに行く前日の話だ。
だからさ、僕は千葉君に八つ当たりで僕のファンを横取りされることを非常に怖れたっていうわけだ。
Do you understand?

そういうわけで、僕はくれぐれもファンレターはひとつ残らずきっちりと僕に転送してくれたまえ、と頼んでおいた。
まあ時限爆弾入りの小包だったりしたら、コチコチ鳴ってる音で察して世間を騒がせている例の高校生探偵に頼むぐらいの機転も含めての話だ。

千葉君に話しておいて良かったと思う。
大原君とやらは仕事が遅いね。
さっさと送っておいてくれよ。
僕は早速転送されてくるというファンメールをこの胸に受けとめる熱い想いでメーラーの受信ボタンをもう一度クリックした。
そしたらだ。
なんと972通受信中、だってさ。
いや、いくらなんでも僕もまさかそんなに、とは驚いたが、これもプロの小説家になった以上はすべてのファンメールに目を通すのも仕事のうちだからね。
トラック一杯のメールでも僕はきちんと読むよ。
その代わり、Rakkaに返信のメールを書くのが少し遅れるかもしれないが、彼女は僕が売れっ子作家になっていくのを信じているから待っててくれるだろう。

今、受信してる。
その間に僕はこれを書いた。
次の日記はファンに返答編、となる。

つい先日、M上H樹氏が期間限定とやらで読者のメールに返事をするサービスをやっていたね。
あれは実は僕が先に思いついた企画でね、僕はいつか小説家になったらファンからのメッセージには丁寧に応える交流会をしばしば開催しようと決めていた。
僕はそれを昔、卒業文集に書いた。
驚いたよねぇ、それをまさかM上H樹氏に読まれてたとはね。いやはや恐れ入る。
もしかしたら彼じゃなくて彼のスタッフの誰かが僕の同窓生というのもあり得るが、それにしても僕はケチではないから自分が考えた企画で御大が楽しんでくれればそれでいい。

僕もついに自分の企画を自分で実行しなければならない時が来た。
次回だ。
僕は期間限定なんてケチ臭いことは言わない。
いつだって僕は応える。
僕のファンだという君に。

待ってて。
きっと次回は君がここを開くとね、楽しい時間が訪れる筈。


posted by Sei at 21:11| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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